皇室制度に関する読売新聞社提言の問題点について〔ご参考〕

皇室制度に関する読売新聞社提言の問題点について〔ご参考〕

皇室制度に関する読売新聞社提言の問題点について〔ご参考〕

皇室

皇室制度に関する読売新聞社提言の問題点について〔ご参考〕

日本会議事務局
令和7年5月22日
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国会で安定的な皇位継承に向けた皇族数確保の議論が大詰めを迎えたさなかの5月15日、読売新聞社が「皇統の安定 現実策を」と題して次の4項目を柱とする提言を発表しました。

〇皇統の存続を最優先に―安定的な皇位継承を先送りするな

〇象徴天皇制維持すべき―国民の支持に沿った方策を

〇女性宮家の創設を―皇室支える皇族数が必要 

〇夫・子も皇族に―与野党は合意形成に努めよ

この提言に関し、若干の問題点を指摘したいと思います。大切な問題ですので、今後の議論の参考に資するものともなれば幸いです。

 

 1、読売提言は「安定的な皇位継承を先送りするな」として、女性天皇・女系天皇を検討することを求めている。これは女性・女系天皇を容認した小泉純一郎内閣の有識者会議報告(平成17年11月)まで時計の針を戻そうとするものである。

 

2、このため、悠仁親王殿下のご誕生以降の政府・各党・国会における検討の積み重ね、すなわち「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議報告書に基づく政府から国会への報告、さらには各党会派の意見書提出、昨年来の各党代表者による6回の全体協議などを、ほぼ無視した内容となっている。

 

 3、しかも提言では、現在の国会の協議でもっとも合意が進んでいる旧皇族の養子案については、正面から提言項目の一つとして検討することなく、否定的な結論に導く誤った指摘をしている。

このほか、現在の国会論議の内容を踏まえることなく、事実誤認や混同など内容的にも問題が多い。
以下、散見される提言の問題点を列挙した。

 

〇問題点1

読売提言「安定的な皇位継承の確保は先送りできない政治課題となっており、与野党は衆参両院議長の下で行われている協議で今国会中に結論を得なければならない。」

【問題点】提言は「安定的な皇位継承の確保」について、「今国会中に結論を得なければならない」としているが、国会は、皇位継承の問題と切り離して「皇族数の確保のための方策」を議論することで、主要政党が合意している。誤った前提での提言となっている。

〔ご参考〕野田立憲民主党代表「この議論(安定的な皇位継承の確保)に入れないということは万やむを得ないという立場で今回の方針は是とする。」(野田佳彦・令和6年5月23日)

 

〇問題点2

読売提言「皇統を安定的に存続させるため、女性天皇に加え、将来的には女系天皇の可能性も排除することなく、現実的な方策を検討すべきではないか。」

【問題点】「皇統」とは、男系(父方)の血脈により継承されてきた天皇及び皇族の系譜であり、母方の血筋を継承する女系天皇は、皇統の「存続」ではなく「断絶」につながる。

 

〇問題点3

読売提言「旧宮家の人たちは、戦後長く一般人として暮らしてきた。そうした人に唐突に皇位継承資格を与えて、国民の理解が得られるのだろうか。」

【問題点】提言は、養子案は旧宮家の方に唐突に皇位継承資格を与えると断定し否定的な考えを示している。一方で提言は、女性皇族の配偶者が一般人から皇族となることへの懸念は何も示さず推奨している。

〔ご参考〕自民党意見書は、養子となる男性は皇位継承資格を持たない策を提案「養子となった(旧宮家の)男性は皇位継承資格を持たず、その男性が養子となった後に生まれた男子は皇位継承資格を有するとのとすることが適切」

 

〇問題点4

読売提言「女性皇族が結婚後も皇室にとどまることができるよう、早急に皇室典範を改正し、女性宮家の創設を可能にすべきだ。」

【問題点】提言は、「女性皇族が結婚後も皇室にとどまる方策」と「女性宮家の創設」とを意図的に混同している。

国会では女性皇族が結婚後も皇室にとどまることができるようにする方策は議論されているが、それは、女性宮家の創設を可能にすることとイコールではない。両者を意図的に混同して自らの提言へと誘導しているのではないか。

 

 〇問題点5

読売提言「与野党協議では、女性宮家の創設について各党の意見が概ね一致している。」

【問題点】「女性宮家」を創設する案について、各党の意見が一致しているという事実はない。提言は、明らかな事実誤認である。

 

〇問題点6

読売提言「憲法には、象徴天皇制と天皇の地位の世襲制が規定されているだけだ。」

【問題点】憲法第2条の「世襲」規定は「男系」を意味するとする見解は、政府でも学界でも支持されてきた事実を、提言は無視している。

〔ご参考〕加藤紘一内閣官房長官「この規定〔憲法第2条〕は皇統に属する男系の男子が皇位を継承するという伝統を背景として決定された」(平成4年)

 

〇問題点7

読売提言「女性皇族の離脱を食い止めなければ、国民の幸せを祈る祭祀や海外訪問を通じた国際親善などを担う方もいなくなってしまう」

【問題点】宮中祭祀は、天皇陛下が主宰される重儀であり、女性皇族は参列はあっても祭祀を担うことはありません。

 

〇問題点8

読売提言「象徴天皇制は戦後、国民に定着し、太平洋戦争の戦地を訪れて慰霊したり、災害現場で被災者に寄り添ったりする皇室の活動は深く敬愛されている。」

【問題点】提言は、象徴天皇制の国民への定着と皇室の活動への敬愛を指摘しているが、国民に寄り添う皇室活動は歴代天皇の伝統であった事実に触れられていない。

〔ご参考〕昭和天皇「その(国民の信頼の)原因というものは、皇室もまた国民をわが子と考えられて、非常に国民を大事にされた。その代々の天皇の伝統的な思召しというものが、今日をなしたと私は信じます。」(昭和52年8月23日)

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