【永田町ニュース】高市首相「異例の指示書」:木原官房長官、茂木外相への指示(安保・外交)
高市首相は、新内閣の発足にあたり各大臣へ指示書(全38ページ)を発出いたしました。
従来、閣議後初の会見で、各大臣が首相からの指示内容を語る場面がありましたが、全文が明らかになるのは異例です。
本記事では、木原稔官房長官と茂木敏充外務大臣への指示内容を抜粋し、具体的な方向性を読み解いていきたいと思います。
Ⅰ、木原稔(内閣官房長官 沖縄基地負担軽減担当大臣 拉致問題担当大臣)への指示
1、 関係大臣と協力して、政府全体のインテリジェンス司令塔機能の強化に向けた検討を行う。
2、在日米軍専用施設・区域の7割以上が沖縄に集中しているという現実を重く受け止め、沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、関係大臣と協力して、その負担の軽減を、目に見える形で実現する。そのため、「できることは全て行う」との基本姿勢の下、本土における努力を十二分に行うべく、全力を尽くす。
3、「すべての拉致被害者を必ず取り戻す」決意の下、拉致問題の完全解決に向けて、外務大臣と緊密に連携しつつ、政府一体となって、総合的に取り組む。
Ⅱ、茂木敏充(外務大臣)への指示
1、日本国及び日本国民の安全と繁栄を確保するため、国家安全保障会議の下、関係大臣と協力して、国家安全保障政策を一層戦略的かつ体系的なものとして実施する。
2、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化し、自由で開かれたインド太平洋を進化させ、日米同盟を基軸に、同盟国・同志国との協力連携を進めるとともに、関係大臣と協力して、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導する。地球規模課題に関するルール形成・強化を進めるとともに、グローバル・サウスへの関与を強化する。対露制裁並びにウクライナ及び周辺国への強力な支援を推進する。国連外交を推進し、安保理等の改革に取り組む。
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【永田町ニュース】自民・維新連立/安保3文書前倒し、防衛装備輸出の規制解除で合意
自民党と日本維新の会の連立合意では、外交安全保障の分野においても、重要な合意がなされました。
岸田政権で策定された「安保三文書」を2年前倒して改訂、長射程ミサイル搭載型の潜水艦開発、かつての武器輸出三原則に当たる「5類型」撤廃、自衛隊の階級や職種の名称の国際標準化などが盛り込まれました。
4、外交安全保障
●戦後最も厳しく複雑な戦略環境の変化に伴い、戦略3文書を前倒しで改定する。
●国際社会における平和を構築する新たな外交手段を涵養する観点から、令和7年度中に、外務省に和平調停に係る部署を創設する。
●わが国の抑止力の大幅な強化を行うため、スタンド・オフ防衛能力の整備を加速化する観点から、反撃能力を持つ長射程ミサイル等の整備及び陸上展開先の着実な進展を行うと同時に、長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有に係る政策を推進する。
●自衛隊の運用に係る組織の効率化及び統合作戦司令部の一元的指揮統制の強化のため、自衛隊の区域統合及び中間結節点の簡素化等を着実に実施する。
●防衛生産・技術基盤を強化する観点から、令和8年通常国会において「防衛装備移転3原則の運用指針」の5類型を撤廃し、防衛産業に係る国営工廠及び国有施設民間操業.(GOCO:Government Owned, Contractor Operated)に関する施策を推進する。
●自衛官の採用状況に関する深刻な情勢に対する危機感と、処遇改善を含む人的基盤の抜本的強化、自衛官の自衛官たる矜持を向上するための施策の必要性を共有し、現下の状況を打破するための抜本的な改革を目指して、自衛官の恩給制度の創設を検討する。また、現在の自衛隊の「階級」、「服制」及び「職種」等の国際標準化を令和8年度中に実行する。
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【永田町ニュース】自民・維新連立/人口減少と表裏の外国人問題。戦略策定へ
自民党と日本維新の会の連立政権合意では、外国人政策についても主要な課題として取り上げられました。
少子高齢化の長期的な人口減少社会を見据えながらも、受け入れの数量規制や、国内の福祉や社会保障制度の悪用への対応が焦点です。
また、合意文書では、外国資本による国内投資の可視化や、土地取得についても現行制度を見直すことを明記しました。
9、人口政策及び外国人政策
●わが国最大の問題は人口減少という認識に立ち、令和七年臨時国会中に、政府に人口減少対策本部(仮称)を立ち上げ、子供子育て政策を含む抜本的かつ強力な人口減少対策を検討実行する。
●ルールや法律を守れない外国人に対しては厳しく対応することが、日本社会になじみ貢献している外国人にとっても重要という考えに基づき、以下の対策を講じる。
(1)内閣における司令塔を強化し、担当大臣を置く。
(2)外国人比率が高くなった場合の社会との摩擦の観点からの在留外国人に関する量的マネジメントを含め、外国人の受入れに関する数値目標や基本方針を明記した「人口戦略」を令和八年度中に策定する。
(3)外国人に関する違法行為への対応と制度基盤を強化する。
(4)外国人に関する制度の誤用、濫用、悪用への対応を強化する。
●令和八年通常国会で、対日外国投資委員会(日本版CFIUS)の創設を目指す。また、令和八年通常国会で、外国人及び外国資本による土地取得規制を強化する法案を策定する。
【永田町ニュース】自民・維新連立、原発再稼働、メガソーラー規制、海底ケーブル強靭化
自民党と日本維新の会が締結した連立合意文書には、
「国産エネルギー開発」、「原発再稼働」、「大規模太陽光発電規制」、「海底ケーブルの強靭化」が盛り込まれました。
いずれも、国民生活と密接にかかわり、インフラだけでなく、安全保障の点でも、大変重要な課題であり、皆様と共有したく思います。
特にメガソーラー規制については、来年の通常国会と期限を定めており、注目されます。
6、エネルギー政策
●電力需要の増大を踏まえ、安全性確保を大前提に原子力発電所の再稼働を進める。また、次世代革新炉及び核融合炉の開発を加速化する。地熱等わが国に優位性のある再生可能エネルギーの開発を推進する。
●国産海洋資源開発(エネルギー資源及び鉱物資源)を加速化する。
7、食料安全保障・国土政策
●食料の安定供給確保が、国民の生存に不可欠であることの認識を共有し、全ての田畑を有効活用する環境を整え、厳しい気候に耐え得る施設型食料生産設備(いわゆる植物工場及び陸上養殖等)への大型投資を実現する。
●わが国が古来より育んできた美しい国土を保全する重要性を確認し、森林伐採や不適切な開発による環境破壊及び災害リスクを抑制し、適切な土地利用及び維持管理を行う観点から、令和8年通常国会において、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を法的に規制する施策を実行する。
8、経済安全保障政策
●南西諸島における海底ケーブルの強靭性を強化するための施策を推進する。
【永田町ニュース】自民・維新連立、国家情報局創設、対外情報庁設置で連立合意
自民党と日本維新の会が締結した連立合意文書には、インテリジェンスにかかわる分野についても、一項目を立てて合意が盛り込まれました。
スパイ防止法や、国家の意思としての外国での情報収集と分析は、遅れてきた分野であり、連立政権での進展が期待できます。
日本会議の活動ともかかわるテーマであり、お知らせいたします。
(連立合意より)
4、インテリジェンス政策
●わが国のインテリジェンス機能が脆弱であり、インテリジェンスに関する国家機能の強化が急務であるという認識を共有し、総合的なインテリジェンス改革について協議し、合意した施策について実行する。
●インテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法及びロビー活動公開法等) について令和7年に検討を開始し、速やかに法案を策定し成立させる。
●令和8年通常国会において内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、「国家情報局」及び「国家情報局長」を創設する。安全保障領域における政策部門及び情報部門を同列とするため、「国家情報局」及び「国家情報局長」は、「国家安全保障局」及び「国家安全保障局長」と同格とする。
●現在の「内閣情報会議」(閣議決定事項)を発展的に解消し、令和8年通常国会において、「国家情報会議」を設置する法律を制定する。
●令和9年度末までに独立した対外情報庁(仮称)を創設する。
●情報要員を組織的に養成するため令和9年度末までにインテリジェンス・コミュニティ横断的(省庁横断的)な情報要員(インテリジェンス・オフィサー) 養成機関を創設する。
【正論】高市早苗新首相に「贈る言葉」 谷口智彦(令和7年10月22日 産経新聞より)
【正論】高市早苗新首相に「贈る言葉」 谷口智彦
(本稿は、令和7年10月22日『産経新聞』に掲載されたものの転載です。)
大統領から突然の要請で、国務長官になれとのこと。主人公の女性は米国国益のからむ外交案件を次々さばきつつ、自分の器を育てる。やがて事の推移は彼女を大統領へ押し上げる。「マダム・セクレタリー」は「マダム・プレジデント」になる―という人気連続テレビドラマが、米国にあった。
大統領になった彼女は右腕を誰にすべきか困り果て、彼女を国務長官に抜擢(ばってき)した前任大統領に寝食を忘れて尽くした男、クセの強い首席補佐官に頼み込んで、再び自分にも仕えてくれまいかと言う。その時の、男のセリフはこうだ。
「国の半分はもうあなたのことを憎んでます。残り半分もおっつけ。仕事をすればするほどね」
≪働くほど敵が増える皮肉≫
大統領になるとは前もって国民の半数を敵に回すことで、就任後は、どんな政策も国論を割るものだから、働けば働くほど皮肉にも敵は増える。それで動じるようでは大統領など務まらない。用意はあるんですか、というわけだ。
いかにもそのまま、高市早苗氏に贈りたい言葉ではないか。
ついでのこと、政権を支えるためなら大統領に毒舌を吐くのもいとわない劇中首席補佐官のような人物―辺りを払う押し出しと、豊かな世間知をともに備えた頼れる首席スタッフが必要だ。
故安倍晋三元首相の第2次政権にはまさにその通りの筆頭秘書官がいて、首相をひたすら支えた。高市氏もそんな人物を見つけてそばに置けたなら、幸いなるかな。
公明党が出奔した次の瞬間から連日続いた新たな連立工作は、いっそ僥倖(ぎょうこう)だった。潰しにかかる勢力を封じ、ゴールを自ら手繰り寄せた戦歴と実績ができた。
自民党総裁イコール内閣総理大臣の等式が成り立たない中、最後は自分で自分の産婆役になった。歴史に稀(まれ)な経験だ。「私にもおかげでハガネが一本通りました」と言ってみるなどしてはいかが。
これから高市氏は戦場を自ら設定し、相手を振り回す側に回る。報道の見出しを最初に奪える立場に立つ。それが強みになる。
≪日本外交の失地回復を≫
施策と法案、規則の改廃を矢継ぎ早に、できれば毎日打ち出して関心を独占するといい。新聞やテレビの他律メディアでなく、自律的に使えるSNSを重視する。
高市氏は自民党総裁選のどこかで、確か「政府専用機を地面に縛りつけておかない」という趣旨のことを言った。有言実行だ。金曜出国・月曜朝帰国の強行日程を毎月1度は入れ、涼しい顔でそこら中に顔を出していただこう。
ガザをめぐる歴史的動きにおいて、日本は不在。それを遺憾とする声すら政府内になかった。恥ずべきことだ。日本が生んだ初めての女性首相に各国首脳が興味をもつ「旬」を逃さず、全員に会うくらいの貪欲さを見せ飛び回り、日本外交の失地を挽回してほしい。
高市氏とは、専門官僚を各省から集めたとして彼らが有すのと同等かそれ以上の専門知識をもち、かつ必要なら数字1桁までソラで言えるという、そんな人物だ。
外交となると、踏んだ場数が少ない。苦手意識があるだろう。
日本語を操る能力に自信があればあるだけ、英語だとそうはいかない自分が歯がゆい。自意識過剰になるともっと口が重くなる。だとしても案ずるには及ばない。
普段は外務省のエース通訳にすっかり依存し、意に介さないことだ。恥じ入る必要など全くない。
≪重大問題に「解」与えるため≫
ではG7サミットなど、とかく世間が注目する首脳オンリーの場をどうこなすか。ここは若い時分に米国で苦労したことを思い出し、脳内で予行演習を何度もする。リアルな英語に時々浸ってもみる。決めたらやる人のようだ。その気になればできるだろう。
もっと大切なことは、例えばドナルド・トランプ米大統領と一対一で会う場合などを想定し、「自分自身の伝記作家となる」努力を日々続けておくことではないか。今日に至る自分の旅を、その紆余(うよ)曲折を、コンパクトなナラティブにしておいて4つか5つ、すぐ取り出せるよう頭に入れておく。
世間は、高市氏がヘビーメタルのドラムを叩(たた)いたことを知っている。でもいちばん練習したのはどのバンドのなんの曲で、そのどんなフレーズだったかは知らない。
夫の山本拓氏とは一度離婚し再婚したそうだと聞き知ってはいても、再婚を決意したきっかけがなんだったかを知らない。その夫は右半身に不自由を抱える。夜遅く帰宅し夫の世話をする時、心に去来したのは何だったか。
これらを聞くひとはその時初めて、「日本初の女性首相」にではなく高市早苗という人格に関心を寄せる。ナラティブが重要、自分を自分の伝記作家にすることが大切なゆえんだ。トランプ大統領に身を乗り出させ、聞き入らせることが当面の狙いか。
一切は衆議院、次いで参議院の選挙に勝ち与党の過半数を両院で奪回せんがため。そして男系皇統維持や自衛隊を憲法に書き込む重大問題に解を与えるためだ。働きまくる日々を続けていただこう。
【永田町ニュース】自民・維新連立、皇室制度、憲法改正、旧姓使用で連携
自民党と日本維新の会が締結した連立合意文書には、皇室、憲法、家族など国家の基本政策に関する合意が盛り込まれ、両党が年限を定めて取り組むことが文書に明記されました。
日本会議の活動ともかかわるテーマであり、お知らせいたします。
令和8年通常国会での皇室典範の改正…男系の男子を養子として迎える案を第一とする。
令和7年臨時国会中に「9条」「緊急事態条項」の条文起草のための与党協議会を設置する。
令和8年度中に、緊急事態条項の改正案の国会提出を目指す。
令和8年通常国会に、旧姓の通称使用の法制化案を提出し成立を目指す。
3、皇室・憲法改正・家族制度等
●古来例外なく男系継承が維持されてきたことの重みを踏まえ、現状の継承順位を変更しないことを前提とし、安定的な皇位継承のため、皇室の歴史に整合的かつ現実的である「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」案を第一優先として、令和8年通常国会における皇室典範の改正を目指す。
●日本維新の会の提言『二十一世紀の国防構想と憲法改正』を踏まえ、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。設置時期は令和7年臨時国会中とする。
●緊急事態条項(国会機能維持及び緊急政令)について憲法改正を実現すべく、令和7年臨時国会中に両党の条文起草協議会を設置し、令和8年度中に条文案の国会提出を目指す。
●可及的速やかに、衆参両院の憲法審査会に条文起草委員会を常設する。
●憲法改正の発議のために整備が必要な制度(例:国民投票広報協議会の組織及び所掌事務等に係る組織法並びにCM規制及びネット規制等に係る作用法等)について、制度設計を行う。
●戸籍制度及び同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら、社会生活のあらゆる場面で旧姓使用に法的効力を与える制度を創設する。そのために旧姓の通称使用の法制化法案を令和8年通常国会に提出し成立を目指す。
●令和8年通常国会において「日本国国章損壊罪」を制定し「外国国章損壊罪」のみ存在する矛盾を是正する 。
■高市政権発足を受けて(日本会議広報部コメント)
「高市政権発足を受けて」 日本会議広報部コメント
高市政権のもと、
男系による安定的皇位継承制度の確立、
自衛隊明記や緊急事態条項といった憲法改正、
旧姓使用の法制化など、重要課題の合意形成と制度の実現がなされることを期待します。
【正論】自民「大テント党」瓦解のその先 谷口智彦 (令和7年7月24日 産経新聞より)
【正論】自民「大テント党」瓦解のその先 谷口智彦
(本稿は、令和7年7月24日『産経新聞』に掲載されたものを許可を得て転載したものです。)
自由民主党は英語なら大テント党とでも呼ぶべき大きな幕屋であって、中では何でもござれだった。右であれ多少の左であれ。
ただし天幕を支持したのは保守の柱一本で、近年は故安倍晋三元首相が両の腕(かいな)でこれを支えた。
≪立党70年「終わりの始まり」≫
その頃テントは高く上がって世界からよく見えたと思ったら、安倍氏がいなくなった。柱からは針金様のステーが何本も延び地面に刺さっていたけれど、これは岸田文雄前首相が根こそぎ外した。
幕屋はそれでも倒れないと思ったのだとしたら、その短見浅慮をいかにせん。事実われわれは7月20日、参院選挙の開票とともに、天幕は吹き飛び幕屋が倒れる音を確かに聞いたのである。
立党はちょうど70年前だ。ソ連の影響力工作に学者や文化人が手もなくやられる中、自民党だけは反共を掲げた。日米安保体制堅持を言うのが当時いかほど不体裁であろうとも、岸信介の奮闘よろしきを得て確乎(かっこ)不抜を通した。
支配政党が変わらない一点で日本民主主義を半人前扱いする者があれば、自民党以外の選択肢はなかったことを教えてやるとよい。
私有財産制と日米安保の護持にさえ誓いを立てるなら後は委細構わず、自民党は大テント党になった。高度成長を背に福祉拡充を急いだ同党は左翼に翼を延ばし、政治的な対立それ自体を包摂・解消せんばかりの勢いだった。
全政党が福祉充実を主張し、戦争にまつわる怖そうな話は当面みんなで箱にしまっておくことにした時期が、かくして生じた。
表向きはさておき、全国民総自民党員だったようなものだ。共産党独裁の隣国が超大国化し、人類史に超絶する軍拡を続けて世界秩序を振り回すだろうなどと、誰ひとり思わない無邪気な頃だった。
箱の封印を開いて自尊自立と自衛の道に日本を導こうとした安倍氏の同志たちは、これからという時に追放の憂き目にあう。しかして自民党の、終わりの始まりだ。
≪幕屋が吹き飛んだあと≫
左右の対立軸は、幕屋が吹き飛んだ今、いっそう尖鋭(せんえい)に見える。
米国などと違って、政府の規模や介入の深浅は、本邦における左翼右翼の別とあまり関係がない。福祉支出額が米国の軍事予算に匹敵する日本のような国で、政府を縮めろ、小さくしろと唱える立論はもとより成り立たない。
蓋(けだ)し日本でいう保守主義とはロイヤリストでありモナーキストであって、あるいはトラディショナリストであると、このごろ筆者はそう説明することにしている。
最初の2語は、細かい語義の差はさておくとして、どちらも皇統の存続を重んじる考えだ。
天皇のご一家は、人類史に稀(まれ)な継続を保たれて今日に至る。とかく長く続いたものには、その背後に無数で無名の人々の献身があるから尊いのだと、伝統重視のトラディショナリストなら考える。
途方もなく長い時間をかけて守ってきた神社仏閣や伝統、仕来たりが、日本には恐らくとても多い。別名をツーリズムと称す粗暴な力が突如現れそれらを踏みにじるのは正視に堪えないと、トラディショナリストは思う。そしてこの感情を「日本人ファースト」というやや露悪的措辞を思いついた参政党がうまくさらって行った。
左翼は往時と違って資本制を否定しない。日米安保も渋々ではあれ受け入れる。しかし彼らに今なおあるのは日の丸を見て嫌悪する神経的反射であり、「君が代」を歌うと自分の中の何かが壊れてしまうかに思う感性の偏頗(へんぱ)である。
≪明確に針路示す政治家は≫
自分が日本人であることは冷めた目で突き放すがよく、ゆめ、そのことを誇りに思うなどしてはならないと思ううち、およそナショナルなものの一切合切が、彼らにおいては憎悪の目的物となる。
移民はゆえに、左翼にとってむしろ歓迎の対象だ。日本的価値を薄めるか混乱させ、ありがたくないものにしてくれると期待してである。おっつけ彼らは、日本の土地で出生した者には自動的に日本国籍を与えろと言い出すだろう。
左翼が昨今とかく反イスラエルである事情にも察しがつく。自国の存立を懸け周囲の敵すべてを無力化すべく懸命の武装国家など、ナショナルな上にもナショナルな存在で嫌悪感を催すのであろう。
一方で軍備増強を急ぐ中国に対し、左翼は概しておとなしい。真剣に対峙(たいじ)しようとすると、自身をナショナルな存在に変えねばならない。それを嫌うからだと見る。
いま「左翼」と称してきた勢力は、大テント党・自民党にも元々かなりいた。今次選挙は比例代表に回った保守派の多くを失職させ、党内左翼に力を与えた形だ。
自民党から保守主義を奉じる人々が去ったか去ろうとしている今、天幕のないかつての大テント党はどこに行こうというのか。
往昔、日本政治にあったかもしれない定常状態はもうない。事態はつとに流動している。「ここに行くのだ」と明確に声を挙げる政治家が一人また一人と現れない限り、有権者の不満は鬱積する。何につけ鬱屈は、不穏を招く。
【正論】インド西方大構想と日本の不在 谷口智彦(令和7年5月22日 産経新聞より)
【正論】インド西方大構想と日本の不在 谷口智彦
(本稿は、令和7年5月22日『産経新聞』に掲載されたものを許可を得て転載したものです。)
安倍晋三氏が政権を退きしかも亡くなってしまって以来、インドの対日関心は低下した感がある。
首相在任当時、安倍氏は日米豪印4国の安全保障をめぐる対話を創始し、地域を捉える新たな枠組みとして「アジア太平洋」に替え「インド太平洋」を打ち出した。
いずれも、インドの未来をいわば先物買いしようとする一種の投資だった。同国のナレンドラ・モディ首相はこれを大いに多とし、安倍氏との絆をとみに深めた。
≪インドの対日関心低下≫
その後の日印関係は、目立って減速しないかわり加速もない。無事というか、退屈な巡航状態だ。
今やインドは東を向いて日本を望むより、変化と可能性がともに豊かに、しかも急速に生じつつある西方に注意を向けている。インドへの関心自体を薄めた日本政府には、そこが見えていない。
4国の枠組みとしてインドの首都ニューデリーで当面の関心を集めるのは、むしろ「I2U2」だ。
IとUを国名の頭文字にもつ2カ国ずつ、インドとイスラエル、USA(米)とUAE(アラブ首長国連邦)からなる集団である。
これにはさらなる土台がある。
ドナルド・トランプ米大統領は第1次政権当時の2020年9月15日(日本時間では安倍政権終了当日)、イスラエル、バーレーン、そしてUAEの国交正常化を各国代表を集めて成就させた。「アブラハム合意」の成立である。
合意にはのち、モロッコとスーダン(政情不安とはいえ)が加わった。今年5月中旬、中東を歴訪した同大統領は、サウジアラビアの合意加盟を強く訴えた。
イスラム教の聖地を擁しアラブの盟主をもって任じる同国が加わった時、合意は一層重みを増す。なお「アブラハム」の名称は、言うまでもなくキリスト教、イスラム教に共通の預言者に由来する。
アブラハム合意ができ、これを土台に22年7月、I2U2も正式に発足した。
≪西を向くインド≫
そのとき4国が合意した協力分野は(1)食の安全(2)水の管理(3)再生可能エネルギーと水素(4)宇宙(5)医療(6)交通とインフラ-つまり民生分野ばかり、日本の得意分野ばかりである。日本が入って「I2JU2」にしたらどうかと、筆者はか細い声で言い続けている。トランプ氏に心変わりさせないためにも日本がかすがいになるといいはずだけれど、霞が関と永田町の無関心の壁はあまりに厚い。
西を向くインドは、以上を踏まえて一大インフラ構想を打ち出した。23年9月、同国が主催した20カ国・地域首脳会議(G20)が提案した「IMEC」のことだ。
合意覚書の署名順に、サウジアラビア、EU(欧州連合)、インド、UAE、フランス、ドイツ、イタリア、米国の7国1団体が構想に加わった。IMECとはインド・中東・欧州・経済回廊の頭文字をとって名付けたものである。
インドのムンバイからUAEドバイのジュベル・アリ港に着いた荷物は、サウジアラビアの砂漠を鉄道で斜縦断してイスラエルのハイファ港に行く。そこからギリシャのピレウス港、イタリアのトリエステ港、フランスのマルセイユ港に至り、欧州各地に向かう交通網に接続する。
中国からパキスタン、イランに及ぶ回廊の向こうを張り、米国の友邦を結ぶ設計である。イスラエルには、その戦略的生息空間を広げてやる効果をもつ。アブラハム合意を政治基盤、I2U2を協力の枠組みとし、その上に成り立つインフラ構想だ。
コンテナの積み替えと移動を海路と陸路で高速で進めるなら、ムンバイとマルセイユを5日で結べる。少なくともそれが夢だ。実現の暁にはスエズ運河を使う海路に比べてイラン系テロ集団の攻撃をさほど案じなくていいうえ、時間にして6分の1にできる。
≪熱気ある構想に関与を≫
先頃、筆者はハンガリーとイスラエルのシンクタンクがブダペストで開いた関連会議に出て、構想が醸し出す熱気に触れた。
あわせて、またしても日本の不在を思った。第一次世界大戦に先立ち、ドイツ皇帝ウィルヘルム2世は頭文字Bの3都市ベルリン、ビザンティウム(イスタンブール)とバグダッドを鉄道で結ぶ3B構想を打ち上げた。そんなことを思い出し、やや血の騒ぎを覚える向きがドイツにあるかは知らず、日本の無関心ぶりは顕著だ。
「アイメック」というと、同名の半導体研究機関がベルギーにある。日本の報道がもっぱら目を向けるのはそちらばかりで、回廊構想の方はとんと聞かない。
サウジアラビアとイスラエルを鉄路で結ぼうというのだから、本来なら血湧き肉躍る構想だ。歴史をつくる大事業でもある。インド当局は、一枚噛(か)まないかポスト安倍の日本には尋ねてさえこなかったのだろうか。いや日本は官民ともぼんやりしきってしまって、インドから西に何が起きつつあるか知ろうとすらしなくなったのか。
いまからでも遅くない。まずは政府が関心を向けるところから始め、関与を追求してもらいたい。
【講演】11月2日〔沖縄県〕谷口会長特別講演会
日本会議沖縄県本部・日本会議沖縄県地方議員連盟 合同総会
谷口智彦先生特別講演会
「世界に咲き誇れ日本ー皇室・憲法・安全保障を語る」
と き:令和7年11月2日(日)
【第1部】 合同総会 13:30 開会
【第2部】 記念講演 14:30 開始
◉日本会議新会長就任記念講演
「世界に咲き誇れ日本ー皇室・憲法・安全保障を語る」
谷口智彦 日本会議会長
※当会の非会員の方でもご参加できます。
ところ:那覇商工会議所 2Fホール
(那覇市久米2-2-10 中小企業振興会館2F)
参加費:500円(当会にご入会いただいた方は無料になります。)
主催:日本会議沖縄県本部・日本会議沖縄県地方議員連盟
〒900-0031 那覇市若狭1-25-11 沖縄県神社庁内
携帯:090-6711-5411(倉科)
Email:npkg.oki@gmail.com
【大阪府】10月6日 天皇皇后両陛下の行幸啓に伴う 大阪国際空港でのお見送り活動へご協力を!
天皇皇后両陛下の行幸啓に伴う
大阪国際空港でのお見送り活動へご協力を!
と き:令和7年10月6日(月) 18:10頃
ところ:大阪国際空港(伊丹空港)JALターミナルバス降り場前
https://www.osaka-airport.co.jp/access/bus
主催:天皇陛下奉迎大阪実行委員会(事務局 日本会議大阪内)
TEL☎ 06-6245-5741 FAX 06-6243-1682
メール nipponkaigioosaka@gmail.com
【大阪府】10月26日 日本会議大阪女性の会 第21回教育講演会
日本会議大阪女性の会 第21回教育講演会
『戦後80年 八百万の神の国』
と き:令和7年10月26日(日)
・総会 13時 ・受付開始 13時30分 ・講演会 14時~16時
ところ:大阪府神社庁5階(〒541-0056 大阪市中央区久太郎町4丁目渡辺6号)
大阪メトロ 本町駅15番出口から徒歩2分
◎講師:中東 弘 宮司(枚岡神社)
参加費:1,000円(大学生以下無料)
参加お申込み(締め切り10月14日まで)
チラシの申込欄に記入しFAX 06-6978-6452 へ、
もしくは、メール nipponkaigi.osaka.joseinokai@gmail.com まで。
主催:日本会議大阪女性の会
お問い合わせ:担当 丸山 090-1448-6849
【岡山県】10月5日 時局講演会「日本の心を未来に繋ぐために」
時局講演会 「日本の心を未来に繋ぐために」
と き:令和7年10月5日(日)13:30~15:30
ところ:津山市総合福祉会館 4階大会議室
津山市山北520 ☎0868-23-5130
入場 無料
◎講師:葛城 奈海 先生(ジャーナリスト)
主催:日本会議岡山 津山支部
問い合わせ:☎0868-24-1122(山本)
後援:津山朝日新聞社
【広島県】10月19日 日本会議広島 広島中央支部 記念講演会
日本会議広島 広島中央支部 記念講演会
日本の保守は今、何をすべきか?
と き:令和7年10月19日(日)15時開演(14時30分開場)
ところ:広島国際会議場(ラン)
広島市中区中島町1-5(平和公園内)
参加費:1,000円(会場でお支払いください)
◎講師:杉田 水脈 氏(前衆議院議員)
参加お申込み▼
こちらをクリック もしくは、
チラシの申込欄にご記入の上FAXで返信をお願いします。
FAX:082-831-6206
主催:日本会議広島 広島中央支部
〈お問い合わせ〉
TEL☎ 082-831-6205 FAX 082-831-6206


















