鹿児島県議会は平成15年7月8日、県内の幼稚園と小中高校で「ジェンダーフリー教育」をしないよう求める陳情を自民党などの賛成多数で採択した。
陳情は、ジェンダーフリーを「男女差別撤廃ではなく男らしさ、女らしさの否定」と定義し「ランドセルを男女とも同じ黒色にしたり、体育で女子にも騎馬戦をさせるなどの事例を批判。「画一的、機械的に男女の違いを認めないというものではない」という政府答弁を引用して「鹿児島県ではジェンダーフリー教育を排除し、男女の違いがあってもそれぞれの特性を生かしながら、互いに助け合う真の男女共同参画社会を志向した教育が行われるよう要望する」としている。
●鹿児島県議会で採択された陳情書
「県内の幼稚園、小、中学、高等学校でジェンダーフリー・教育を行わないよう求める陳情」
(陳情の趣旨)
平成11年に「男女共同参画社会基本法」が施行されて以来、全国各地の教育現場で男女共同参画社会推進に名を借りて、男らしさ、女らしさまでも否定するジェンダー・フリー教育が行われ、問題視されている。
鹿児島県においては、ジェンダー・フリー教育を排除し、「男女の違いがあっても、男女がそれぞれの特性を生かしながら、互いに助け合ってより良い社会を作るように参画する」という、真の男女共同参画社会を指向した教育が行われることを要望する。
(陳情の理由)
「ジェンダー」とは本来、男性名詞、女性名詞、中性名詞といった文法上の性を意味する言葉である。この言葉は1970年代のアメリカの女権拡張主義者(フェミニスト)たちが、「社会的・文化的に作られた性別秩序」という意味で使い始め、その後、日本のフェミニストたちが「人間の性別秩序は社会的・文化的に作られたものであるから、それをなくすことが可能である」という理論に基づき、「ジェンダー」に「なくす」という意味の「フリー」を付けて「ジェンダー・フリー」という和製英語を作った。
ジェンダー・フリー思想の目指すものは、男女差別撤廃ではなく、男女の区別の撤廃、すなわち男らしさ、女らしさの否定である。平成14年に文部科学省委嘱事業として作成された『新子育て支援〜未来を育てる基本のき』パンフレットは、ジェンダー・フリー思想に沿って編集されており、「男らしく」「女らしく」育てるのは間違いであるとして、鯉のぼりや雛祭り等の伝統文化を否定的に記述し、母性を否定し、乳幼児保育の大切さを「三歳児神話」と決めつけ、同性愛も当たり前と説明していることが問題になった。
そしてジェンダー・フリー思想は、人工妊娠中絶など、産む・倦まない、を女性だけの考えで決定することを権利(性の自己決定権。リプロと略称される)であると主張する。この「リプロ」の考え方は人口妊娠中絶容認につながるものであり、人工妊娠中絶に一定の制約を設けた母体保護法や、堕胎罪を定めた刑法に抵触する恐れがあるとの指摘もある。厚生労働省所管財団が、全国の中学生に無償配布する目的で平成14年に作成した性教育冊子『思春期のためのラブ&ボディーBOOK』は、「リプロ」の考え方に基づいており、女性は人口妊娠中絶などを一方的に決めることができる権利を有していると説明し、中学生も性交することを前提に、ピルによる避妊を奨励し、性感染症予防の目的でコンドームの使用法を解説する内容であった。さすがに遠山文部科学大臣も「中学生には不適切」とコメントし、国民からの批判も高まり、ついに絶版・回収処分となった。
ジェンダー・フリー思想が日本の教育現場に登場したのは、東京の小学校の一部教師がジェンダー・フリーの運動をはじめた平成7年頃からである。ランドセルを男女とも同じ黒色にする、体育の授業で男女を分けないで女子にも騎馬戦をさせる、身体検査も男女一緒に行う、掃除の際に女子に机を運ばせて、男子に雑巾がけをさせる、学芸会で男の役と女の役を全部入れ替える、などの実例が報告されている。甚だしきは性教育と称して、小学生に性交の具体的な状況を教えたり、中学生にコンドームの装着練習をさせるという。
このようなジェンダー・フリー教育の現状は、国会でも問題にされた。平成14年11月、衆議院青少年問題特別委員会で福田康夫官房長官(男女共同参画担当相)は、ジェンダー・フリー教育の現状について、「あまり行過ぎてはいけない。ほどほどにしてほしい」と感想を述べた。また、政府は男女共同参画社会推進について、「画一的、機械的に男女の違いを認めないというものではない」(米田建三内閣府副大臣)、「男女の性差を画一的に排除しようとするジェンダー・フリー社会を目指してはいない」(坂東眞理子内閣府男女共同参画局長)と強調した。
幸いにして、本県の教育現場ではジェンダー・フリー教育が行われている実例を見聞しない。鹿児島県の教育行政関係各位におかれては、男女共同参画社会推進に関する政府見解に沿って、また鹿児島県男女共同参画社会推進条例を遵守しながら、ジェンダー・フリー教育ではない、真の男女共同参画社会推進のための教育を進められることをお願い致したい。
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