『日本の息吹』平成9年2月号掲載
加藤芳郎 漫画家
大正十四年生まれ。『毎日新聞』夕刊の連載漫画「まっぴら君」は昭和二十九年以来現在まで一万二千回を越える。日本漫画家協会前会長。
昨今「日本の行く末はどうなるのか」といったつぶやきが風の間に間に聞えてくる。「このままでは日本はダメになる」……そんな溜め息まじりの声を発しながら、うつ向き加減に歩く姿の日本人が多くなった感じなのである。
元気がいいのか、やけくそなのか、目に光りはないが、やたらに日本の悪しざまを論拠もなしに隣国に報告に行く「反日政治家」。それよりも先立って”謝罪正義論”の狂気じみたキャンペーンを相も変わらず繰り広げている「反日マスコミ」。まことに寒々とした日本になったものである。
《「日本国民であることを誇りに思うか」の問いに「思わない」と答える人は年齢が下がるにつれて増える。そんな調査結果を聞かされいささか気落ちした(後略)》(東京新聞コラム「筆洗」一月十四日より)。
一月十五日、成人の日の毎日新聞の東海林さだお氏の漫画「アサッテ君」では、アサッテ君の妻子が、日の丸を掲げた家の前を通りがかり、「この家にはお年寄りがいらっしゃるはずよ」「ほんとだ」。玄関先に老人が立っている四コマ。まことにこの漫画の通りで、祝日に日の丸を揚げる家は近ごろ殆ど無く、たまに揚げてる家は戦(前・中)派の老人の家というわけだ。
戦中派の老人の子供の頃の二月十一日「紀元節」の朝は、軒並み日の丸がハタメキ、庭のある家の白梅、紅梅の花がチラホラ。春まだきの冷えた空気の上空は冴えた青空。小学校の「式」に出席。教室をぶち抜いた講堂に全校生徒整列。「ご真影」に頭を垂れ、校長生の「教育勅語」奉読に息を止めて聴き、終了後一斉にせき払い。そして「紀元節」の歌♪雲にそびゆる高千穂の〜を合唱。紅白のお供物を戴いて家に帰ったのである。おごそかで楽しく、子供心にも「日本ていいなあ〜」と思える早春の一日であった。
戦前教わった「日本の神話」は、アメリカでは現在でも教科書にのっているそうだが、戦後の日本の教科書からは消されてしまった。千三百年前に書かれた「古事記」の「神代の巻」は雄大な美意識に充ちた絵物語である。イザナギ、イザナミ、天照大神、天孫降臨、神武天皇……。現代の教科書の「倭奴国王」が学問的、史実的に確かなものかどうかは知らないが、「神話」とくらべていかにも貧相である。この国の建国を神武天皇のご創業とした先人のロマンを私は素晴らしい知恵の「歴史」として信奉したいと思っている。貧相な「倭奴国」の歴史教科書は、それはそれとして「古事記神話」も併せて教科書復活を切に願っている。それと四月二十九日の「みどりの日」を是非とも「昭和の日」にして戴きたいと思うのである。
歴史 ─ 悠久の歴史と先人の歩みに学ぶ