期日:平成10年11月
会場:東京国際フォーラム
○開会の辞
皇室伝統の光栄と
日本人の幸福
小堀 桂一郎
日本会議副会長・東京大学名誉教授
今上陛下が御位にお即きになりましてより、本年で十年が経過いたしました。この間の十年は、いまさら個々に指摘し数え上げるまでもない国の内と外とを問わず、まことに多事多端な歳月でした。例えば国内におきましては、大津波があり、大地震があり、火山の噴火があり、トンネル事故等の自然災害が襲い、また社会的規模の凶悪犯罪、経済的崩壊の危機等の大きな災いが発生し、それは言わば国際的、全世界的な話題とならざるをえない性格のものでございました。そしてこのような不幸に対して、我が日本国民がどのように対処し、切り抜け、又どのような後始末をなし得たかが国際的な注目の的となります。概して言えば異常な事態に対応して、日本国民が示しました正常心の保持、秩序回復への感覚と行動の確かさは自ら満足のいくものであり、外からみてもおおむね称賛に値するものと映ったのです。
私共はそこに皇室を国民統の中心として、象徴としていただく日本人の国民的団結の幸福を見て取ることができたのです。遠い昔に例を取れば、寒夜に衣を脱いで民衆の寒さを思いやり給い、あるいは我が一身に代えて、敵国降伏を祈り給うた古の帝たち、近くに例を取れば、勝ち誇る占領軍の司令官の前に、文字どおり御身柄を投げ出して、飢えに苦しむ敗戦国の民への救援を願い給もうた先帝陛下にまで続く我が皇室伝統の光栄に思いをはせまして、私共の幸いをかみしめるのです。
不肖私共日本会議という組織は、先帝陛下の御在位五十年、六十年の奉祝運動、今上陛下の御即位奉祝、御大典斎行の奉賛運動等に取り組み、又各地への行幸の度に全国で盛大な奉迎行事を実施いたしまして皇室への敬愛の心を育成する精神運動に携わって参りました。それは、この心こそが取りも直さず我が日本の未来の栄誉と繁栄に向けての国民精神高揚の柱であり、美しき日本を昔と変わらぬ姿のまま後世に伝えていくための不可欠の手段であると信じたからでござい
ます。今日の佳き日のこの祝典を一つの踏み台と致しまして、より美しき明日の日本への力強い一歩を踏み出しいと願うものでございます。
○主催者式辞
天皇陛下のご聖徳に
心からの感謝の誠を
小田村 四郎
日本会議副会長・拓殖大学総長
この度、天皇陛下におかれましては、第百二十五代の皇位にお即きになられてより十年という誠に慶賀すべき年を迎えられました。心からお祝い申し上げます。
私はここで、今上陛下の御聖徳を二点、申し述べたいと思います。
この十年間、我が国では国民生活を襲う大規模な自然災害が発生しました。平成七年には阪神淡路大震災が発生し、実に六千人を越える死者を出すという戦後最大の大惨事上なりました。
天皇皇后両陛下には、瓦礫の山や焼け野原となったこれらの被災地にいち早く行幸啓され、犠牲者の冥福をお祈りになり、またその遺族や被害を受けた人々にお会いになっては一人一人に心温まる励ましのお言葉をおかけになりました。悲嘆のどん底に落とされた人々にとって、両陛下のご慰問がどれほど大きな明日への希望の光となったことか想像にかたくありません。
次に天皇陛下におかせられましては、すぐる大東亜戦争に尊い命を捧げられた戦没者とその遺族に対しても、特に深い思いを寄せ続けていただいて参りました。平成七年は終戦満五十年を迎えましたが、この前後にわたり、各地への行幸啓や遺族へのご慰問に御心を砕いてこられたのであります。平成六年には、陛下の強いご希望によりまして日米最大の激戦地であった硫黄島へ行幸啓になり、二首の御製を詠んでおられます。
精魂を込め戦ひし人未だ地下に眠りて島は悲しき
戦火に焼かれし島に五十年も主なき箆麻(ひま)は生ひ茂りゐぬ
先の戦争を巡っては多くの議論があり、政府や国会において誠に残念な声明や決議が強行される中、両陛下にはひたすら戦没者への慰霊とその遺族や病み傷ついた人々を労われたのでありました。
このように天皇陛下は、国の誇りと歴史の重みを背負われつつ、こうした厳しい時代を乗り越えるため、常に国民の連帯と協力を願われ、国の安泰を祈り続けてこられたのです。私共はこの大会を機に、本年から明年にかけて、天皇陛下御即位十年をお祝い申し上げるとともに、皇室を中心とする国民精神をいよいよ高める国民運動を全国の皆様とともに展開したいと思います。来年は全国津々浦々で盛大な奉祝行事が実施されますことを念願しております。
○主催者式辞
天皇陛下のご存在は
日本の活力の源泉
島村 宜信
日本会議国会議員懇談会会長・前農林水産大臣
この度、天皇陛下におかれましては御即位十年という慶賀すべき年をお迎えになりました。心よりお祝い申し上げる次第であります。
戦後、学習院中等科にお進みになった陛下は、将来何になりたいか、
との先生の質問に対し「私は天皇になります」とお答えになられたそうです。陛下は、ご誕生と同時に「日継ぎの皇子」としての運命を背負われ、国民錬合の象徴として、日々の国事に御精励いただいて参りました。
陛下は日々、誠に多忙なご公務をお務めになっておられます。私共政治家の立場から拝見いたしましても、「激務」の一口につきます。最近一年間の陛下のご公務の一部をご紹介いたしますと、国事行為を始めとする儀式や行事が約二百件、公的文書のご処理は二千四百件、そして最も重要な宮中祭祀が三十回を数えます。さらに御即位後の外国ご訪問は既に七回、十四カ国にのぼります。こうした膨大な数のご公務にも誠心誠意心を込めて対応され、又会われる人々には、常に誠実さと慈愛の心をもって臨まれる。陛下にお会いして感動しない者がいないのはこのためです。
戦後の日本国苛法は、天皇の国事行為を制限し、憲法学者も「天皇は象徴にすぎない」と唱えて参りました。しかし私は、天皇陛下のご存在、そして戦後果たしてこられた大きな役割は、まさに「国及び国民統合の靂としてのお役割をいかんなく発揮されてこられたのではないか、と考えております。
換言すれば、いついかなる時にあっても、常に無私の御心で国民を見守っておられる不動の定点としての天皇陛下のご存在が、日本の活力の源泉となり統一の原点となって国の安定と発展が図られてきた、ということです。
今我が国の国情は、まことに厳しい状況下にあります。当然、私共政治家の責任も大きいものがあります。この時にあたり私共は、天皇陛下の御心を仰ぎ、国民が一致団結してこの危機に当たる、その秋を迎えていると確信いたします。
どうかご列席の皆様方、この十年にわたる陛下のご足跡に感謝の誠を捧げるとともに、国難とも呼ばれるこの時代を、私共の力で乗り越えていこうではありませんか。私共日本会議国会議員懇談会も皆様方とともに、誇りある国づくりに邁進していくことをここにお誓い申し上げます。
○政府代表祝辞
御即位十年を契機に
国民の叡知の結集を
小渕−思三内閣総理大臣
代読 古川貞二郎(内閣官房副長官)
「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」が、内外多数の方々
のご参集を得て、このように盛大に開催されますことは、誠に意義深いものがあり、皆様方と共に心からお喜びを申し上げます。平成の御代になって十年。天皇皇后両陛下におかれましては機会あるごとに親しく国民に摸せられ、ある日は災害に遭われた方を激励され、国民との触れ合いを大切にしてこられました。日本国及び日本国民統合の象徴であられる陛下と国民を結ぶ敬愛と信頼の絆は、ますます強く、深くなっており、誠に喜ばしいことでございます。また対外的な面でも、数多くの国々をご訪問され、我が国と諸外国との友好親善の一層の発展に努められたところでございます。
翻ってこの十年を顧みますと、内外ともに様々な経済社会の変動がありました。我が国は国民の努力によって一つ一つ課題を克服し、国民生活も総じて安定の中に推移し、国際的にも重要な役割を果たして参りました。現下の最大の課題である金融経済問題も、国民の皆様の叡知と金融システム再生のための諸政策、金融経済政策が相保って、必ずや乗り越えられるものと考えております。急速な少子高齢化、情報化、国際化が進展する中で二十一世紀を明るく希望に満ちた時代として築き上げていかなければなりません。天皇陛下御即位十年を契機として、我々は叡知を結集し、さらなる努力を積み重ねていく決意を新たにするものでございます。ここに改めて皇室のご繁栄をお祈りいたしますとともに、皇室と国民との親愛の絆がさらに深まることを心から期待いたします。
○駐日外交団祝辞
天皇陛下の慈悲深い御恵みに感謝
トロン・メアリー
カンボジア王国特命全権大使
日本政府代表を始め、各界の代表の皆様、又各国外交団の皆様とともにここに天皇陛下御即位十年をお祝いすることができますのは、私にとって大きな名誉であります。
皆様方のご努力は国の宝である良き伝統と文化を通して、世界に貢献する営みであると存じます。伝統と文化は文明を形作るものであり、国の創始者たちの優れた素質と天賦の才の結晶を伝えるものです。一六三二年、森本右近太夫が父親の菩提を弔うため、アンコールワットまで巡礼の旅をしたように、日本とカンボジアは、歴史に深く根差した強い友情の絆で結ばれています。アンコールワットの岩に刻まれた日本語の文字は、今も同寺院の第二回廊の柱に見ることができます。
一九五五年十二月にはシアヌーク国王陛下の日本公式訪問という記念すべき出来事があり、当時国内で対立する政党の四者会談が赤坂離宮で行われました。この会談は、一九九三年の我が国の総選挙を成功に導いた国連カンボジア暫定統治機構アンタックの受け皿として機能したカンボジア最高国民評議会の先駆とみなすことができます。そしてアンタックの監督の下、一九九三年九月二十四日、ついに我々は新しいカンボジア王国を誕生させました。
その後も数十年統いた内戦によって複雑な問題を抱える我が国を、日本国民及び政府は、天皇陛下の慈悲深い御恵みの下、忍耐と柔和さをもって我が国王陛下の困難な事業を助けてくださいました。その結果私共は、極めて前向きな結果を得ることができました。本日、この奉祝式典に参加するに際し、私共カンボジア人は、日本の多岐にわたる寛大なご支授に深い感謝を捧げたく存じます。
○各界からの祝辞
英国マスコミを変えた
両陛下の優しさと気品
富田 朝彦
元宮内庁長官・財団法人菊葉文化協会理事長
本日、「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」が開かれ、かくも多数の皆様のご参集があり、これからの日本のためにがんばろうとお気持ちを決められたことは大変意義深いことであり、一国民といたしまして心よりお香び申し上げます。
天皇陛下は、第百二十五代の天皇として御即位になられ、その後から皇后様と国内各地を巡られ、国民の慰労と激励にお務めになられました。なかんずく戦死者の遺族や戦傷者、被災者のお慰めには特にお心をお使い遊ばされたのであります。こうしたお忙しい日々の中にも、昭和天皇が踏み固められました祭祀を受け継がれ、宮中三殿へのお参りを始め、宮中の伝統的な行事を実践されておられます。さらに、陛下は皇太子時代よりすでに六十カ国余りの国をご訪問になられ、また来日される多くの国賓を心からおもてなしになるなど、大変国際璽口にお心をお配りになって来られたのであります。
本年五月、渡辺侍従長が両陛下のお供で英国へ渡りました折、英国マスコミの報道ぶりについて述べておりました。英国の元戦争捕虜であった人達の激しい感情を、両陛下が静かに真っすぐ受け止められているお姿を拝見した英国マスコミは、優しさや教養の深さとともに気品という言葉を使って報じていたということです。
陛下は常に数歩先を見据えて世界の平和と国民の幸福をお考えになっており、しかもそうした諸事を無私の心で実践されているのであります。非常にお忙しく国民のためにお働きいただいている両陛下のご健康と我が国の隆昌を心から祈念いたします。
○各界からの祝辞
両陛下の激励が
相撲協会一同の励み
境川 尚
日本相撲協会前理事長
本日、「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」において、相撲協会を代表して、お祝いを申し上げますことは、身にあまる光栄であり、誠に感激の極みです。
今上陛下におかれましては、先帝昭和天皇の御遺徳を継承され、多事多難な内外の諸情勢の中を世界平和のため、また国内におかれましては、日本国民の平和安住のため、度々各地を行幸啓されるという多忙な日々を過ごしておられます。その中において、国技館にご来駕され、国民とともに相撲をご観戦いただき、さらには両陛下より温かい激励を賜りましたことは、相撲協会一同の明日への大きな励みとなっております。
両陛下が硫黄島をご巡行された数カ月後の平成六年六月、私共相撲協会も同島へ渡り、貴乃花と曙の日米両横綱の土俵入りをもって、奉納いたしました。これは相撲協会といたしましては、本当に意義のある歴史に深く残る一頁であり、私にとりましても生涯忘れることのできない行事でありました。
また私共は毎年、靖国神社の参拝と奉納相撲を行わせていただいております。相撲協会も日本会議の皆様とともに靖国神社に祀られております御霊をお守りして参ります。そして日本の伝統文化の継承団体でもある相撲協会は、世界に誇る国技であるとの自覚の下に切磋琢磨し、より以上の技量を収めるよう今後とも相撲道に精進、努力して参ります。
最後に、皇室のいやさかの永遠と天皇陛下の御身のご健勝をご祈念し、日本会議の意義を一人でも多くの人々に理解していただくため、微力ですが努力いたします。日本会議の益々のご発展をお祈りいたします。
○各界からの祝辞
今なお新たな両陛下のお言葉
田村 亮子
柔道選手
明るく希望に満ちた平成の年が明けまして、天皇陛下におかれましては、御即位十年の慶節をお迎えになられましたことを心よりお祝い申し上げますとともに、お喜びを申し上げます。また「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」に招かれましたことを栄誉と思い、国民の一人として感謝しております。
私が天皇皇后両陛下にご拝謁の機会をいただきましたのは、二年前のアトランタオリンピックの後のことでした。オリンピック選手として皇居に招かれ、天皇陛下より「よくがんばりましたね」とのお言葉を、また皇后様からは「国民の皆様の期待を背負ってたいへんだったでしょうね。お怪我はなさってないのですか」と本当に異心のこもった優しいお言葉をかけていただきました。快い緊張感を伴ってお会いできましたことを昨日のこ七のように鮮明に覚えております。
私事でたいへん恐縮ですが、私が小学二年生より柔道を学び始めまして六年目の年にあたる平成元年は、私が全日本の選手になることができた貴重な年でありました。国内では地方で合宿が組まれることが多く、そこで多くの方々にお会いし、四季折節の美しい景色や日本の歴史や文化に触れ、日本人が守り伝えてきた日本の心、日本の良さが私をほのぼのとした気持ちにさせてくれました。
外国での大会では、二度のオリンピックを日本の代表選手として出場させていただき、また世界選手権にも四度を重ねさせていただきました。外国では、日本との文化の遠いを肌で感じる機会も多くあり、日本のすばらしさ、とりわけ古来より日本人が育んできた日本の美しい心が思い起こされました。天皇皇后両陛下にお会いできまして、愛情あふれるお言葉をいただき、温かにお心使いに感謝を捧げますとともに、両陛下の益々のご健勝をお祈り申し上げます。
宣 言
今上天皇陛下におかれては、御即位よりここに十年、誠に慶智ずべき年を迎えられた。
顧みればこの十年、我が国をめぐる内外の諸情勢の激動と混迷は、誰しも予想の及ばないところであった。外にあっては、冷戦後の世界に新たな対立
と紛争が相次ぎ生起し、内にあっては、国民の気概が失われ、国の独立と名誉が損なわれる事態がここかしこに出来している。政治、経済、社会のあらゆる分野において大きな混乱が生じ、我が国は、今まさに国難とも言える時代に遭遇している。
この間、天皇陛下におかれては、昭和天皇の御心を継承され、ひたすら国運の進展と国民の恵福、世界の平和を念じて御心を砕かれてきた。
すぐる大戦には深い思いを寄せられ、激戦の地、硫黄島や沖縄などの行幸を始め、国のため散華したあまた戦没者に懇篤な慰霊の御心を賜り、その遺族や戦争で病み傷ついた人々を労われた。また、阪神淡路大震災などの天災地変に際しては、御親ら現地に赴かれて被災者を励まされ、悲嘆にくれる人々に大きな希望の光を厚くされて、その御
聖徳は、世界の人々に深い感銘を与えている。
我々は、かかる厳しい時代を国民統合の象徴として、常に国民と苦楽をともにして歩んでこられた天皇陛下に、心からなる感謝の誠と敬慕の念を謹んで捧げる。
本日ここに「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」を挙行するにあたり、我々は、政府主催による記念式典の実現を求めるとともに、全国津々浦々において奉祝運動を盛り上げ、皇室を中心とする国民精神をいよいよ昂揚し、国難の打開に努め、もって誇り高い国づくりに遇進することを誓う。
右、大会の総意をもって宣言する。
平成十年十一月二十八日
「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民の集い」
皇室 ─ 皇室敬慕の伝統を守ろう